
現代の経営者は、かつてないほど多様な課題と向き合わなければなりません。市場環境の急激な変化、従業員の価値観の多様化、グローバル化による競争の激化、そして予測不能なリスク…。これらの状況下で、経営者が企業の羅針盤として冷静で適切な意思決定を下し続けるためには、感情の自己管理力が不可欠です。
感情は意思決定や人間関係、ひいては企業文化にも大きな影響を与えます。経営者が自身の感情に気づき、適切にコントロールできるか否かは、本人だけでなく、組織全体のパフォーマンスや雰囲気にも直結します。しかし、日本のビジネス界では依然として「経営者は常に強く、冷静でなければならない」「感情を表に出すのは弱さの証」といった固定観念が根強く残っています。そのため、多くの経営者が自分の感情を抑え込み、結果として知らず知らずのうちに意思決定や人間関係に悪影響を及ぼしてしまうことも珍しくありません。
本コラムでは、経営者が感情の自己管理力を高める意義と具体的な方法、得られるメリットについて、最新の心理学的知見や実践的なヒント、事例を交えながら詳しく解説します。
感情の自己管理力とは何か
まず、感情の自己管理力とは具体的にどのような能力なのでしょうか。これは、心理学やコーチングの分野では「セルフマネージメント」、「エモーショナル・セルフ・リーダーシップ」や「情動的自己制御」と呼ばれています。
感情の自己管理力が経営者に必要な理由
経営者が感情の自己管理力を高めるための具体的ステップ
それでは、実際に経営者が感情の自己管理力を高めるためには、どのような取り組みが有効なのでしょうか。以下、具体的なステップをご紹介します。
最新の心理学的知見から考える感情マネジメントの重要性
近年の脳科学・心理学の研究では、感情と意思決定の関係について多くの知見が蓄積されています。たとえば、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンの研究では、人間の意思決定は「速い思考(直感的・感情的)」と「遅い思考(論理的・分析的)」の両方によって行われていることが示されています。感情が意思決定に与える影響は計り知れません。
また、エモーショナル・インテリジェンス(EQ)は現代リーダーに必須の資質とされ、感情認識・自己制御・共感力・人間関係管理などが組織パフォーマンスと強く関係していることが世界的に認められています。
実践事例:感情マネジメントが経営を変えた瞬間
ある老舗メーカーの社長は、長年「経営者は常に毅然としていなければならない」と考え、感情を表に出すことを極端に避けてきました。その結果、部下とのコミュニケーションが表面的になり、部下も本音を言わなくなったことで、現場の課題がトップに上がってこなくなってしまいました。
しかし、経営危機をきっかけにカウンセリングを受け、感情の自己観察と表現を練習するようになったことで、状況は一変します。会議で「正直、今の状況には不安もある。しかし、皆と一緒に乗り越えたい」という率直な感情を伝えたところ、部下たちも本音を語り始め、現場から多くの建設的な提案が出るようになりました。結果として危機を乗り越え、社内の一体感が格段に高まったのです。
経営者のためのセルフケアとしての感情マネジメント
感情の自己管理は、決して「我慢する」「無理にポジティブになる」ことではありません。むしろ「自分の感情に正直であること」「時には弱さも認め、ケアすること」こそが、持続可能なリーダーシップの土台となります。
時には休息をとり、趣味や家族との時間を大切にする、気分転換の時間を意識的に確保することも、経営者の大事なセルフマネジメントです。
まとめ:感情の自己管理力で経営に新たな風を
経営者が感情の自己管理力を高めることは、自分自身の健康と成長だけでなく、組織全体をしなやかで強いものにするための最重要課題です。日々の小さな感情チェックから始めてみてください。それが、意思決定の質の向上、組織の一体感、そして持続可能なリーダーシップへとつながっていきます。「感情は弱さ」ではなく、「感情と向き合う力こそが、真の強さ」なのです。
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