Columnコラム

経営者が陥りやすい「ワーカホリズム」に注意

Column

経営者の方々が持つ「仕事への情熱」や「責任感」は、企業の推進力であり、経営の根幹を支える大切な資質です。しかし、その熱意が度を越し、自分でも気づかぬうちに「ワーカホリズム(仕事中毒)」に陥ってしまうケースが少なくありません。
ワーカホリズムは、ただの「働き者」とは異なります。仕事への執着が心身の健康や人間関係、経営判断力にまで悪影響を及ぼす、現代の経営者が特に注意すべきメンタルリスクです。

本コラムでは、ワーカホリズムの特徴や背景、経営者が陥りやすい理由、その弊害と、健全な働き方へとシフトするための実践的ヒントを詳しく解説します。

ワーカホリズムとは何か

ワーカホリズム(workaholism)とは、「自分の意志ではコントロールできないほど仕事に没頭し、仕事以外のことを犠牲にしてしまう状態」を指します。
単に「仕事が好き」「長時間労働をしている」だけではなく、心理的な依存・強迫観念に基づく働き方が特徴です。

具体的には、

  • 仕事をしていないと不安や罪悪感にかられる
  • 休暇やプライベートの時間にも仕事のことが頭から離れない
  • 家族や友人との関係が希薄になる
  • 体調不良や疲労感を無視して働き続ける
  • 自分以外の働き方に厳しくなり、他人にも過度な働きを求めてしまう などの傾向が見られます。

経営者がワーカホリズムに陥りやすい理由

なぜ経営者ほどワーカホリズムに陥りやすいのでしょうか。その背景には、経営者特有の心理や環境が関係しています。

  1. 強い責任感と「自分がやらなければ」という思い込み

経営者は、会社の命運や社員の生活を自分が背負っているという強い自覚があります。「自分が休んだらすべてが止まる」「自分がやらなければ誰もやらない」といった思い込みが、休むことや delegating(委任)することへの罪悪感につながります。

  1. 成功体験の強化サイクル

「寝食を忘れて働いたから今の成功がある」「努力し続けることで周囲から認められてきた」という経験があるほど、ワーカホリックな働き方を自分のアイデンティティとしてしまいがちです。

  1. 社会的な評価やステータス

日本社会では、長時間労働や自己犠牲が「美徳」とされる風潮があります。経営者同士で「何時間働いているか」「休みを取っていない自慢」になってしまうケースも少なくありません。

  1. 仕事を「生きがい」にしすぎている

経営者は、ビジョンやミッションへの情熱が強いほど、仕事の成果や役割が自己肯定感と直結しやすくなります。そのため、仕事以外の時間や活動を「無駄」と感じ、結果的に心身を酷使してしまいます。

ワーカホリズムがもたらす弊害

ワーカホリズムは、本人の健康だけでなく経営や組織にも大きなリスクをもたらします。

  1. 心身の健康悪化

慢性的な睡眠不足や疲労、ストレスの蓄積により、心筋梗塞や脳卒中などの生活習慣病、うつ症状やバーンアウト(燃え尽き症候群)など、命に関わる健康問題が生じます。

  1. 経営判断力・創造力の低下

過労状態では、脳の前頭葉の働きが鈍り、正しい意思決定や新しいアイデアを生み出す力が著しく低下します。
「働きすぎて視野が狭くなる」「小さなミスが増える」「人の話に耳を貸せなくなる」など、経営の質自体が損なわれます。

  1. 組織文化への悪影響

経営者自身がワーカホリックな働き方を続けると、それが無言の圧力となり、社員にも長時間労働や無理な働き方が蔓延します。
「休むことは悪」「遅くまで残っている人が偉い」といった文化は、離職や人材流出、メンタル不調の温床となります。

  1. 家庭・私生活の破綻

家族との時間や友人関係、趣味や自己投資の時間が極端に減り、結果的に孤立や人生の満足度低下を招きます。
「会社のために働き続けた結果、家庭が崩壊した」「子どもの成長を見守れなかった」と後悔する経営者も少なくありません。

ワーカホリズムから脱却するための実践的ヒント

  1. 自分の「働き方」に客観的に気づく

まずは、自分の1週間の働き方や時間の使い方を可視化し、「どのくらい働いているか」「どんな時に仕事をやめられなくなるか」を振り返りましょう。
スマホやアプリ、手書きのタイムログでも構いません。
自分のワーカホリック傾向に気づくことが第一歩です。

  1. 「休むこと」「任せること」に意識的にチャレンジする

定期的な休暇や家族との時間、趣味の時間を「経営のための投資」と捉えてスケジュールに組み込みましょう。
また、業務の delegating(委任)やアウトソーシングを積極的に進め、自分しかできない仕事だけに集中できる環境を作りましょう。

  1. 「成果」と「時間」への価値観を見直す

「長く働く=高い成果」という価値観から、「限られた時間で最大価値を生み出す」働き方へシフトしましょう。
自分の強みや集中できる時間帯を活用し、タスクの優先順位を見直すことも有効です。

  1. 社員にも「健全な働き方」を発信する

経営者自身が率先して休暇やリフレッシュを取り、「休んでいい」「効率的な働き方を評価する」メッセージを発信しましょう。
「トップが休まないから自分も休めない」という構造を断ち切ることが、組織全体の生産性向上につながります。

  1. 心身のセルフケアを習慣化する

定期的な運動や十分な睡眠、栄養バランスのとれた食事など、基本的な健康管理を「最優先タスク」として取り入れましょう。
また、メンタルヘルスの不調を感じたら早めに専門家に相談することも大切です。

経営者のワーカホリズム脱却事例

  • F社長(50代・サービス業)
    「自分が休むと会社が回らない」と思い込み、10年以上休暇を取らずに働き続けた結果、心筋梗塞で倒れ緊急入院。
    その後、業務を分担し、週に1度は家族と食事や散歩をする時間を作るように。
    「自分が休むことで、逆に社員が成長した。経営者が倒れることが一番のリスクだった」と実感した。
  • G社長(40代・ITベンチャー)
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    時間仕事のことを考えてしまい、睡眠障害とうつ状態に。
    コーチングを受けて「仕事以外に幸せや充実を感じる時間」を意識的に増やし、働き方が劇的に改善。
    会社の雰囲気も良くなり、離職率が低下した。

まとめ:健全なワークスタイルが経営の質を高める

ワーカホリズムは「経営者としての強さ」の証ではありません。むしろ、持続的で柔軟な経営の最大の障害となります。
経営者自身が「休む勇気」「任せる勇気」を持ち、仕事と私生活のバランスを整えることで、経営判断力・創造力・組織のエンゲージメントが大きく向上します。

自分の健康と幸せを犠牲にしない働き方こそが、企業の未来を切り拓く力になります。
「仕事中毒」から一歩抜け出し、真の意味でしなやかな経営リーダーを目指しましょう。






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