企業でメンタルヘルス対策をしていると、さまざまな診断名と出会います。
本シリーズは、できるだけわかりやすくそのような診断名を解説することを目的としています。
第一回 パニック障害はこちら
第二回 強迫性障害はこちら
第三回 ○○状態はこちら
第四回 社会不安障害はこちら
第五回 統合失調症はこちら
今回は、PTSDです。
個人的には、この本がわかりやすく専門的にも勉強することができると思います。
PTSDとは、post traumatic stress disorderの略で日本語では心的外傷後ストレス障害と訳されます。
日本では平成7年の阪神淡路大震災のときに新聞をにぎわせた診断名です。一時期芸能人夫婦がこのPTSDだとマスコミをにぎわせたこともありました。
死ぬような出来事を体験するあるいは目撃してしまうことで、ストレスを感じ症状を呈してしまいます。
職場においては、重大な災害の後この診断名を目にすることがあるかもしれません。
平成10年に民事でのPTSDによる損害賠償請求が認められて以降、労災請求でもこのPTSDを目にすることが多くなってきました。
理由の一つとしてはほかの精神疾患と異なり、原因について触れているからです。
普通の精神疾患には、○○があってその結果この症状という形では診断基準はできていません。
症状=診断名という判断になっています。
DSMという診断基準上唯一、原因→症状=診断名となっているので、労災請求しやすいという事情があるのかもしれません。
心理学辞典(有斐閣)から一部PTSDを引用すると、
自分自身や他人の死や重篤な傷害に至る恐れのある事件を経験するといった外傷体験によって発症し,激しい恐怖感や無力感などを症状に含む不安障害の一型である。具体的には,戦争,地震,津波,火災,交通事故などを経験したり,テロ,強盗殺人,レイプなどの犠牲者になるといったことをきっかけとして発症してくる。
病像としては,
(1)悪夢やフラッシュバックによって外傷的出来事を繰り返し再体験する,
(2)外傷的出来事と関連した刺激を持続的に回避しようとするか反応性の鈍麻を示す,さらには感情が萎縮し極度のうつ状態をきたしたり未来に対して展望をもつことができなくなる,
(3)睡眠障害,易怒性,集中困難,過度の警戒心・驚愕反応・生理的反応など,覚醒の持続的な亢進を示す症状が認められる,
の三つが中心となっている。
これらの症状は非常に耐え難い苦痛を伴うため,日常生活は破壊され,対人恐怖,性的困難,離婚,失職,アルコール依存,自殺などさらなる障害や不都合をきたすことも珍しくない。アメリカなどではヴェトナム戦争の復員兵などに多くの発症者がおり,アメリカ精神医学会がDSM-(APA1980)で臨床単位として整理して以来注目されてきたが,日本でも1994年の北海道南西沖地震,95年の阪神大震災と大災害が続き,注目を集めるに至った。約半数は3カ月以内に回復するが,予後不良なものも多い。それらに対しては,通常,薬物や支持的精神療法だけでは十分な効果は得られないが,特異的な症状に焦点を当てた行動療法,認知行動療法などが著効を示すことがある。
となっています。
一つだけ、かかりつけ医の技量を見分けるコツとしては、PTSDは診断基準の一つに出来事から1か月以上経過してというものがありますので、1か月未満にも関わらずPTSDと診断書が来た場合は、その診断はDSMなどの操作的定義を利用していないということがわかります。
いずれにせよ、会社としてPTSDとして労災請求が来た場合は、出来事の内容を客観的にまとめ、それが事業主としての安全配慮義務に違反していないかをまず点検する必要があります。
それと同時に、当事務所のような”こころと法律の専門家”へ至急相談いただければと思います。
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