ストレスチェックを実際に導入したものの、なかなか社員が受けてくれないというのはよく聞く話です。私は、法改正でストレスチェックが義務化される前からストレスチェックの導入に携わってきましたが、ストレスチェックの受検率を向上させるにはいくつかのポイントがあると感じています。それらを5つ、あげてみます。
個人のストレス状況というのは、高度なプライバシーであまり会社に知られたくないという人が多くいます。自身の状態が悪いことを会社に知られてしまうと今の仕事から外されたり、なにか不利益な取り扱いをされるのではないかと心配することが多くあります。そのような人でも受検してもらうにはきちんとプライバシーが確保されていることが大切です。また、会社は同意なく結果を知ることができないということや、不利益な取り扱いをしないということをきちんと伝えておくことも大切です。その意味では、ストレスチェック導入に当たって、衛生委員会の審議できちんと労使でプライバシーについてはよく議論しておくことが大切でしょう。今回の法改正でもかなり厳格に求められている要件となりますので、ストレスチェック実施に当たって必須事項と言えるでしょう。
いくらプライバシーは大丈夫。不利益な取り扱いはしませんと表明していても最終的にこの信頼関係がないとなかなか難しいと感じています。すぐに形成できるものではないので難しいのですが、ここがすべての基本であると考えています。
定期的にストレスチェックを実施していると、そのうちストレスチェックが何か特別なものではなく、当然のものとして定着してきます。このようになるまで繰り返し、繰り返しストレスチェックを実施していくことが大切です。多くの企業で1回目のストレスチェックよりも2回目、3回目以降のストレスチェックの方が受検率が高くなります(逆に低くなっている場合は何らかの問題が発生しているので、対応が必要です)。繰り返し当たり前のものとして実施し続けるというのが案外大切なポイントとなります。
ストレスチェックは単に実施して終わりということではなく、きちんとその後の施策とリンクさせることが大切です。そのためにきちんと自身のストレスチェックの結果が悪かったときに気軽に相談できる窓口を設置したり、ストレスチェックの結果の読み取り方研修を実施したりすることが大切です。自分自身がストレスが高いと気付いても、それでおしまいでは何の意味もないのです。要はストレスチェックをやりっぱなしにしないことが大切なのです。
②の信頼関係と近いのですが、事業主がきちんと社員の健康問題について考えている会社ではストレスチェックの受検率が高いです。例えば「安全なくして経営なし」と社員の安全を社是にしている会社では、メンタルヘルス対策に対しても労使ともに真摯に取り組んでおり効果も高いです。普段から事業主の考えを表明しておくことが大切で、一貫性がある取り組みであることを伝える努力が必要でしょう。
以上が5つのポイントとなります。しかしながら目的がストレスチェックの受検率の向上だけになってしまうとまた目的と手段が入れ替わってしまいます。ストレスチェックはやるだけでは、何も会社は変わりません。あくまでもメンタルヘルス対策の、あるいは人が辞めない生産性の高い職場づくりの第一歩として導入するという考え方が大切です。
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