Columnコラム

在宅勤務時の労働時間の把握はどのようにしたらよいか?

Column

 

労働時間の管理

 

従業員に残業を命ずる以前の話になりますが、会社には従業員の労働時間を把握する責務があり、労働時間管理を必ず行わなければなりません。

労働時間の管理が必要な対象者は、以下の①②の者を除く全ての労働者です。

      みなし労働時間制が適用される者
      労働基準法第41条に規定される管理監督者

厚生労働省が「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日)を策定し、これに基づいた適正な労働時間管理することを求められています。

厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

以上のことから、会社が従業員に残業をさせるのであれば、雇用の際に残業発生の可能性がある旨を伝え、労働時間を適正に把握し管理しつつ、36協定で締結した延長可能な労働時間を超えないようにしなくてはなりません。

 

テレワークを行う従業員の労働時間管理

 

従業員の労働時間管理には、始業・終業時刻の確認と記録が必要ですが、その原則的な方法として先ほどご紹介したガイドラインでは次のように示しています。

・使用者が、自ら現認することにより確認すること
・タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録などの客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること

しかし、上記の方法ではテレワークには馴染みません。

ではテレワークを行う従業員の始業・終業時刻を確認する方法はどのようなものがあるでしょうか。以下の例が挙げられます。

厚生労働省「テレワークで始める働き方改革」より

個人的には勤怠管理ツールの中にもジョブカンのようにGPS打刻できるものがお勧めであると考えています。

 

時間外・休日労働の労働時間管理

 

国が掲げた働き方改革実行計画(平成29328日働き方改革実現会議決定)において、テレワークが長時間労働につながる恐れがあると指摘されていることを受け、厚生労働省は平成30222日に「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を策定しました。いわゆる「雇用型テレワークガイドライン」です。

厚生労働省「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン

テレワークの場合、残業や休日労働(以下、「残業等」)を安易に認めてしまうとそれが常態化して長時間労働になるリスクが高まるため、雇用型テレワークガイドラインの中では「時間外・休日労働の労働時間管理について」として記載があります。

ここではその内容を要約してお伝えします。

残業等を行う際のルールが、就業規則などに「事前許可制・事後報告制」として以下の様に定められている会社があるとします。

a)事前申告する

b)許可を得て業務を行う

c)事後に実績報告をする

この制度について、申告時間に上限時間が設けたり実績どおりに申告しないように会社から圧力をかけない等が前提です。

そのような会社の従業員が残業等をした際に、もしも

・事前申告をしなかった

又は

・事前申告をしたが許可されないまま残業等をし、事後報告も無かった

場合は、その残業等は一定の要件を満たせば労働時間に該当しません。

つまり会社は割増賃金を支払う必要はありません。

その一定の要件とは、以下の①②③すべてに該当することです。

      残業等を行うことについて、会社から強制されたり義務付けられた事実がないこと

      当日の業務量が過大であったり期限の設定が不適切である等、残業等をせざるを得ないような会社からの黙示の指揮命令がないこと

      従業員が残業等を行ったことが客観的に推測できるような事実(従業員からのメール報告や成果物の提出)がなく、会社が従業員の残業等を知り得なかったこと

このことから、ガイドラインで求められていることは、以下のように読み取れると思います。

残業等について事前許可制・事後報告制があり適正に運用することで、会社は割増賃金を支払うこと。

もしも事前申告が無かったり申告に許可を与えなかった場合でも、以下のケースは割増賃金を支払うこと。

ケース1:業務量が過大である・黙示の指示があるという理由で従業員が残業等をせざるを得ない状況

ケース2:従業員からのメール報告や成果物の提出によって、残業等の事実を会社が知り得る状況

以上のことから、あらかじめ適切なツールを活用し労働時間の管理を適正に行うことと、残業の申請ルールを明確にしておくことが大切だと言えるでしょう。






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