経営者、人事担当者の皆さま

ストレスチェックQ&A

ストレスチェック義務化に伴いこれまでに受けた
よくある質問に対して回答していきます。

ストレスチェックが義務化に

2014年6月19日に労働安全衛生法の改正案が衆議院を通過し、同25日に公布されました。 このことから、2015年12月にすべての企業(50名未満は努力義務)にストレスチェックが義務化されることになりました。 本変更は企業にとって、とても大きな変更と考えております。 この記事では、ストレスチェック義務化に伴いこれまでに受けたよくある質問に対して回答していきたいと思います。

事前に確認! Q&A

Q1:義務化というけど罰則はあるの

A:現状では罰則規定はありません。しかしながら企業が実施すべき義務を果たしていない状況でなにか労災事案などが発生した場合、企業側は極めて不利な状況になります。また罰則がないから実施しないという発想ではなく、CSR(企業の社会的責任)の面からもきちんと導入することをお勧めいたします。 →(2014年12月25日追記) ストレスチェック制度導入にあたり、衛生委員会での審議が義務付けられる方向です。その意味では、最悪50万円以下の罰金刑が科される可能性があります。

Q2:ストレスチェックとはそもそも何ですか?

A:確かに経営者の方にとって、そもそもストレスチェック義務化とは聞くけど、そのストレスチェックとはなんだというのは当然の疑問かもしれません。
ストレスチェックとは、心理学の世界では「質問紙法」と呼ばれる、自記式のアンケートのようなものです。今の状態を4〜5件ぐらいの状態に区分し(例えば「ほとんどなかった」・「時々あった」・「しばしばあった」・「ほとんどいつもあった」等)回答するものです。

よく商業施設などで求められる、顧客満足アンケートをイメージするとわかりやすいかもしれません。
アンケートのように、今のこころの状態について1問1問回答していくことにより、自身のストレスの状態を数値化することができます。
街のアンケートと違う点は、ストレスチェックは、標準化(数字の1点が全国的に同じ意味を持つこと)されており、統計学的に処理されているということです。
案外人間にとって今の心の状態を客観的に把握することは難しいものです。そのような時に、このストレスチェックを実施することで、例えば「今日は○点なぐらい落ち込んでいる」、「今日は気分がすぐれない気がしたけれども、ストレスチェックをしてみたら昨日よりは○点状態は良いようだ」などという風にデジタルン日把握することができます。
実施方式は紙で実施するものとWebを用いたもの、スマートフォンを用いたもの等様々存在します。当事務所では、法で求める個人情報管理が最も実施しやすい紙方式を推奨しています。

Q3:健康診断の問診票と一緒に実施すればいいと聞いたけど…

A:今回のストレスチェックでは、健康診断の項目とは別にストレスチェックを実施することとなっています。 健康診断の結果は事業主を経由して労働者へ通知されますが、ストレスチェックの結果は事業主を経由しないという点が異なっていますのでとても注意が必要です。 →(2014年12月25日追記) 健康診断と同じ日にストレスチェックをすることは可能です。しかしながら、たとえば問診票とストレスチェックを別の紙で実施するなど工夫が必要です。

Q4:50名未満の会社だからまだ実施しなくていいですよね?

A:当事務所では、50名未満の事務所こそ実施することをお勧めしています。努力義務とはいえ、企業には今回義務化されました。さらに小規模な事業所こそ、一人一人の影響が大きく本来メンタルヘルス対策が大切と考えるからです。そのためにはきちんとアフターフォロー(たとえば労働者が相談できる窓口がついている、あるいは企業に対しての就業規則の改訂等、制度コンサルテーションが選べる)のついているストレスチェックを選択することが大切です。

Q5:なにか9項目だけ実施すればいいと聞いたのですが…

A:法改正の審議の経過中にそのような議論がありました。しかしながら、現状では職業性ストレス簡易調査の57項目のうち半分程度実施することとなっていますので、9項目だけ実施すればOKということはありません(今後指針などが発表されます)。 →(2014年12月25日追記) 現時点では、職業性ストレス簡易調査票のすべての項目(57項目)を実施しておくことをお勧めいたします。

Q6:企業としてどういう心構えで今回の法改正に対処すればいいでしょうか?

A:よくお伝えしているのが、今回の法改正を単に負担が増えたと捉えないでいただきたいということです。法改正をきっかけにこれまでなかなか手の回らなかったメンタルヘルス対策に取り組むきっかけができたと考えていただきたいです。そのためには、形だけストレスチェックを実施するのではなく、きちんとPDCAをまわせるようなストレスチェックを導入いただければと思います。あくまでもストレスチェックはメンタルヘルス対策の一部であって、それだけではメンタルヘルス対策にならないことに注意が必要です。

Q7:結局どのストレスチェックを導入すればいいの?

A:世の中にはたくさんのストレスチェックがあります。当事務所では、当方が理事を務めている一般社団法人ウエルフルジャパン のストレスチェックをお勧めしています。信頼性・妥当性の高いストレスチェックで、きちんと従業員の相談窓口や、組織へのコンサルテーション(就業規則の改訂含む)も選ぶことができるからです。ご興味ある方は、一般社団法人ウエルフルジャパンあるいは、当事務所までお問い合わせ頂ければと思います。
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Q8:支店の従業員は50人未満なのですが、
全社で50人を超える場合には義務になるのでしょうか?

A:事業所ごとの人数で50人未満か否かを確認するので、全社で50人を超える場合であってもこの場合は努力義務となります。

Q9:50名丁度のときは義務になるのでしょうか?

A:50名以上が義務化されています。しかしながら49名であっても努力義務であることは間違えないので、実施する方が望ましいです。

Q10:労働者もストレスチェックを受ける義務があるのでしょうか?

A:今回の安全衛生法上は労働者にストレスチェックを受ける義務は課されていません。しかしながら、会社としてきちんと社員の安全を守りたい、そのために受けてくれとメッセージを発するなどなんらか努力が必要と思われます。

Q11:ストレスチェックは年に1回実施すればよいのでしょうか?

A:ストレスチェックの実施頻度は、1年に1回定期的に実施することとなりました。

Q12:健康診断のように、外部機関に委託してもいいですか?

A:問題ありません。委託により実施する場合は、ストレスチェックの結果を実施者から直接労働者に通知する必要があり、労働者の同意なく事業主に通知してはいけない点を注意ください。

Q13:外部機関にストレスチェックの実施を委託した場合、
ストレスチェックを実施したその期間の医師等は、
産業医に結果を提供しても問題ないのでしょうか?

A:産業医に労働者の同意なく結果を提供してはならないこととなります。

Q14:ストレスチェックだけやれば、メンタルヘルス対策になりますか?

A:ストレスチェックだけでは改善になりません。包括的な対応が必要です。例えば、ストレスチェック実施後に研修を行ったり、外部相談窓口を設置し広報したり、人事制度を検討したり総合的に考える必要があります。

Q15:ストレスチェックの結果について、
個人が特定されない形で加工して集団的なデータとして
事業主が利用してもいいでしょうか?

A:個人が特定されない形で集団的に利用(たとえば、部署ごと等)することは認められています。ただしあまりにも集団が少数である場合は、容易に個人が特定される恐れがあります。厚生労働省では10以上を義務付けています。 集団データを利用し、社内で改善すべき優先順位をつけて対応していくことはむしろ推奨されるべきことだと考えます。

Q16:事業主はストレスチェックの結果を保存しなくていいのでしょうか?

A:現時点では保存はストレスチェックの実施者が行うこととされていますので、事業主には保存義務はありません。しかしながら、労働者の同意を得たうえで結果を得た場合は5年間の保管義務が発生します。に研修を行ったり、外部相談窓口を設置し広報したり、人事制度を検討したり総合的に考える必要があります。

Q17:健康診断のようにストレスチェックの実施報告を
労働基準監督署へ行う必要はあるのでしょうか?

A:実施義務者の数、受検者の数、高ストレス者の数等を医師の記名押印した上で提出する必要があります。

Q18:ストレスチェックに含めることが不適当な項目というのはあるのですか?

A:健康管理にでないもの、労務管理につながるものを項目に入れるのは不適当とされています。たとえば会社への忠誠心といったものを一緒に聞くのは不適当とされています。現時点でオリジナルのストレスチェックを利用している事業主はこの点チェックが必要です。

Q19:なぜ労働者にストレスチェックを受ける義務は課されなかったのでしょうか?

A:今回のストレスチェック制度は、労働者のメンタルヘルスに関する情報という、極めて機微性の高いものを取り扱うこと、既にメンタルヘルス不調で治療を受けている方にとってはそれ自体が精神的な負担を与える恐れがあることから、労働者への義務化は設けられませんでした。 しかしながら事業主はストレスチェックを実施することは義務化されていることから、運用上は注意が必要です。

Q20:(ストレスチェックの後の)面接指導の申し出を理由として
不利益な取り扱いをしてはならないこととされていますが、
「不利益な取り扱い」とは具体的にどのようなものを指しますか?

A:今回のストレスチェック制度は、労働者のメンタルヘルスに関する情報という、極めて機微性の高いものを取り扱うこと、既にメンタルヘルス不調で治療を受けている方にとってはそれ自体が精神的な負担を与える恐れがあることから、労働者への義務化は設けられませんでした。 しかしながら事業主はストレスチェックを実施することは義務化されていることから、運用上は注意が必要です。

Q21:どのようなポイントでストレスチェックを選べばよいですか?

A: 国が示している条件は以下の通りです。

  1. 「仕事のストレス要因」、「心身のストレス反応」及び「周囲のサポート」の3領域に関する項目を
    全て含まなければならない。
  2. 企業で衛生委員会で審議の上、項目を選定することはできるが、一定の科学的な根拠が必要。
  3. 国としては、旧労働省の委託研究により作成され、研究の蓄積及び使用実績がある
    「職業性ストレス簡易調査票」(57 項目の調査票)を推奨。
  4. 結果通知では、個人のストレスプロフィールをレーダーチャートで出力して示すなど、
    分かりやすい方法を用いることが適当
  5. ストレスチェックは「性格検査」や「適性検査」を目的とするものではないことから、
    そうした目的で実施する項目を含めることは不適当。
  6. 「希死念慮」や「自傷行為」に関する項目は、背景事情なども含めて評価する必要性がより高いため、
      体制が不十分な場合(ほとんどの企業が該当すると思われます)、検査項目としては入れないほうがよい。
  7. うつ病等の精神疾患のスクリーニングテストではないこと。

となっています。 国では、独自に企業がストレスチェックの項目を選定できるとはしていますが、実質は「職業性ストレス簡易調査票」を利用した方が、企業としては無難そうです。
Office CPSR(オフィス シーピーエスアール)臨床心理士・社労士事務所で提供しているストレスチェックは、「職業性ストレス簡易調査票」をもとに、4.で求められている結果が見やすくなる工夫がなされています。

Q22:国はどのような目的でストレスチェックを義務化したのですか?

A: 国の目的をダイジェストに書くと、

  1. 労働者本人に気づきを促すことでメンタルヘルス不調のリスクを減らす
  2. 職場で集団的分析を通じた改善によりリスク要因そのものを減らす
  3. 高リスク者を抽出・早期発見から医師による面接指導につなげメンタルヘルス不調を未然に防ぐ
  4. ストレスチェック制度が、働きやすい職場の実現を通じて生産性の向上も目指す

ということになります。 つまり、国が求めているのは、単にストレスチェックをやればよいというものではありません。メンタルヘルス不調の予防のみならず、生産性の向上までを目的としているのです。

Q23:派遣労働者はストレスチェックの対象になりますか?

A:ストレスチェック制度に関する検討会報告書によると、法令上、ストレスチェックの個人対応は、雇用関係を有する派遣元が実施義務を負う。となっています。 つまり、一般の健康診断と同様、派遣労働者のストレスチェックは派遣元が実施義務を負っています。
しかしながら、注意が必要なのは、ストレスチェックには、「個人対応」と「集団対応」の2つの側面があります。 個人対応とは、労働者個人に対してストレスチェックを実施し、結果を本人に通知し、高ストレ ス者に面接指導を行い、必要に応じて就業上の措置を行うものです。 集団対応とは、労働者個人の結果を集団的に分析し、職場環境改善に活かすものです。
今回のストレスチェックの義務化法案では、この集団対応は、派遣先事業者に努力義務として課されています。 つまり、派遣労働者に対して、企業は少なくとも集団分析ができるようストレスチェックを実施する必要があるのです。 ここが、一般の健康診断と違うポイントです。
実際に派遣労働者にとっては、2回ストレスチェックを受けることとなり、実際の運用はどのように整理されていくかは今後、指針などで示されていくかとは思います。 事業主にとって、現在関心事は、個人対応にのみ向いている傾向がありますが、実は集団対応という側面も求められているという点に注意が必要です。

Q24:導入時はどうすればよいですか?

A:今回のストレスチェック義務化において、実際にストレスチェックを導入する際には衛生委員会で審議をすることが必要となっています。衛生委員会での審議の方法のアドバイスや書式の提供も当事務所では実施していますので、事業主の方は手間いらずです。

Q25:ストレスチェックはなぜ義務化されたのか?

A:なぜ今回のストレスチェック義務化というものを国は実施しようとしているのでしょうか?

1.自殺者の増加
平成25(2013)年の我が国の自殺者数は27,283人であり、3万人を下回りました。しかし依然高水準であり、しかも働き盛り世代の死因の1位が自殺という現状があります。(警察庁「自殺統計」、厚生労働省「人口動態統計」より)。交通事故での死亡者が5千人を切っていますので、自殺でなくなってしまう方がいかに多いかということがわかります。

2.安衛法に質の視点を入れた
労働安全衛生法では、時間外労働(1カ月あたり80時間を超える)という労働の「量」に対する過重をチェック項目に入れています。さらに、メンタルヘルス不調には過重労働以外の要因も考えられることから、労働の「質」に対するチェックを追加することが必要と考えています。そのために、ストレスチェックを実施し、現在のストレス状況を労働者が自ら見ることにより気づきを促すことを目的としています。

3.精神障害等の労災補償状況
請求・認定件数ともに高水準で推移しています。平成24(2012)年の支給決定件数は475件(前年度比150件の増)で、過去最多となっています(厚生労働省広報)。このころからもストレスの状況を事前に把握して、改善につなげることが大切と考えられています。

4.総合的なメンタルヘルス対策の促進
政府は、メンタルヘルスに取り組む事業所の割合を2020年までに100%にする目標を掲げています。メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業場の割合は増えてはいるものの依然として取組が遅れている企業も多く、総合的なメンタルヘルス対策の促進が必要であると考えられます。その取り組みの入口として今回のストレスチェックが導入されました。

以上の4つの観点からストレスチェックが義務化されました。まだ多くの企業でこのストレスチェックが義務化されたことを認識していません(2014年末の調査では95%の方がストレスチェックが義務化されたことを認識していませんでした)。
経営者の方におかれましては、何か面倒くさい義務が増えたなと捉えるのではなく、これまで後回しにしがちであった、企業のメンタルヘルス対策を積極的に実施するチャンスととらえていただければと存じます。
メンタルヘルス対策は、費用対効果の検討が行われており、ROI(投資対効果)は2倍であると当事務所はお伝えしています。ROIが2倍ということは100万円投資すると200万円戻ってくるのです。なにやらうつ病予防と聞くと暗くなるのですが、2倍の効果がある投資と考えてはいかがでしょうか?

Q26:事業主の方や人事はどうすればよいのか?

A:なんだか難しいな、どのようにやればより効率的かなとお考えになられましたら、Office CPSR(オフィス シーピーエスアール)臨床心理士・社労士事務所に「ストレスチェックについて」とお問い合わせください。
通常新たな業務が発生して残業が発生するところ、残業いらずで新制度を導入することができ、その後の改善活動により業績向上まで目指すことができます。